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(花火職人の)彼にいわせると、花火は、生きてる化け物だという。あの怪奇な、あの蒼白い妖焔ようえんの幻滅する間際に、自分の魂というものを考えると、知らない女とでも死にたくなるという。――そうかと思うと、こっちの胸に火の移る恋でもある時は、どーんとひらいた柳の中へ、ふところの金でも何でも、追っかけに抛り上げたいような狂躁にもそそられる。
吉川英治 / 銀河まつり ページ位置:70% 作品を確認(青空文庫)
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打ち上げ花火
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前後の文章を含んだ引用
......青い火が降るとぞっとするようなことがあらあ。やっぱりこいつあ化物の類だろうよ。  七は、自分の作った八寸玉の、その重量にさえ、一種の気味わるさを感じるのだった。  彼にいわせると、花火は、生きてる化け物だという。あの怪奇な、あの蒼白い妖焔ようえんの幻滅する間際に、自分の魂というものを考えると、知らない女とでも死にたくなるという。――そうかと思うと、こっちの胸に火の移る恋でもある時は、どーんとひらいた柳の中へ、ふところの金でも何でも、追っかけに抛り上げたいような狂躁にもそそられる。だが、両国などの熱鬧ねっとうした花火の晩のあと、暗い霧が落ちて、しいんと都会が冷たくなる時の陰気さはなんともいえない。やっぱり花火は生き物で、妖怪さ。  七は今も、そんな......
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胸(むね)
・・・1.体の前面で、首と腹との間の部分。また、その内側にある心臓や肺臓、胃などの内臓。
2.(胸に宿るとされている、)心。想い。心中。
3.乳房(ちぶさ)。おっぱい。
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