懐石料理は、本膳料理を簡素に表したものといわれている。しかし、現在の懐石料理は、上品なもの、贅を尽くしたものであれば、懐石料理と名づけて出す料亭も多くなってきた。

日本人を魅了してきたとろけるような懐石料理

会席料理は旬の味覚だけでなく、盛り付けや器の美しさも楽しむ

懐石料理は敷居が高い

私は眼の前の会席膳（かいせきぜん）の食品の鮮やかさに強て念頭を拭（ぬぐ）った。 　季節をさまで先走らない、そして実質的に食べられるものを親切に選んであった。特に女の眼を悦（よろこ）ばせそうな冬菜（ふゆな）は、形のまま青く茹（ゆ）で上げ、小鳥は肉を磨（す）り潰（つぶし）して、枇杷（びわ）の花の形に練り慥えてあった。そして、皿の肴（さかな）には、霰（あられ）の降るときは水面に浮き跳ねて悦ぶという琵琶湖の杜父魚（かくぶつ）を使って空揚げにしてあるなぞは、料理人になかなか油断のならない用意あるがことを懐（おも）わせた。

掻き交ぜ過ぎた和えものは、お白粉を塗りたくった顔と同じで気韻は生動しない。

見応えのある幕の内弁当

焼きたてのご飯の上にほんのちょっと醤油をつけた海苔を乗せる。ほのかな磯の香り、香ばしい味わい、日本人のＤＮＡが反応している。ああ、うまい・・・

豪快で野趣あふれるカジカの味噌汁

大根の煮付けは、少々甘すぎるほど砂糖が入っていて、私には下町育ちの人の好む味わいのように思われて、一層うれしい心持ちがした