鋪道（ほどう）は灯の川だ。人の洪水だ。

坂（さか）の下に大きな一つの街燈（がいとう）が、青白く立派（りっぱ）に光って立っていました。ジョバンニが、どんどん電燈（でんとう）の方へおりて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影（かげ）ぼうしは、だんだん濃（こ）く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振（ふ）ったり、ジョバンニの横（よこ）の方へまわって来るのでした。

町の灯（あかり）は、暗（やみ）の中をまるで海の底（そこ）のお宮（みや）のけしきのようにともり

夜が更けるにつれて灯は消え始め、最後には街灯とネオンの灯だけが残った。

街灯が点くのは、星がひとつ増えるようなものだし、花が一輪咲くようなものだから。

小屋がけの見世物やの灯が、ほおずきみたよに見えましてなァ

（サイパンに住む色白の男）陽の下では、色素のうすいコズミくんは透けそうに見えたが、その四肢はしっかりとサイパンの空気に根づいているように堂々としていた。

（夕方、競技場の影）競技場を 挟んでちょうど真向かいにあたる観覧席の上段に、三本のポールが立っていて、それが邦彦と老人のいる場所まで長い影を落としていた。三本の影は、楕円形の競技場の中心を貫いて、邦彦の背後のまだずっと遠くへと伸びていた。どんな強風にも左右されない一直線の影というものが、邦彦には妙に不思議な現象に思われた。 　ポールが揺れないかぎり、影も決して揺れはしないのだと、邦彦は新しい物理的法則を発見したかのように、その三本の黒い線を見つめた。

懐中電灯が影の多い、同心円の光芒が室内を照らす

川船のまわりに人魂が漂うように、船頭のつけた提燈の火が波に赤い色をうつしていた。

血管のような赤いパイプ

自動販売機に小銭を滑り込ませる。

蜘蛛の巣のように張り巡らされた電線

二本の電信（でんしん）ばしらが、ちょうど両方（りょうほう）から腕（うで）を組んだように赤い腕木（うでぎ）をつらねて立っていました。

窓に流れ込むネオンの余光が部屋の中を赤く青く交互に染める