仏壇から見つかったレシピで作った幻の料理

誰からも愛されるロングセラーならではの味わい

五代に渡り受け継がれてきた秘伝のタレ

今昔変わらぬ味を、熟練の職人が心を込めて焼きあげた

古代書より受け継がれた味

ライムの酸味を舌の上で殺しながら

おそるおそる熱いレモンティーをすする。

ふんわり魔法の食感

砂糖のように甘ったるい甘味

体中が焼けるようにからい

戦後の、日本にとっては未曾有の食糧危機は数年つづき、海軍にいたころ、六十キロあった私の体重は四十二キロに減じてしまった。

過去と現在についてはこのとおり。未来については「おそらく」である

「今はそんな規則はなくなったけどなあ。でも、今だって、みんなは外へは出ないんだ」 「規則はないのに？」 「よくあることだろう。例えば、ぐるぐる振り回した振り子は、手で回すのをやめても、回りつづけている。それと同じだな。回っているほうでは、止まってよいのかどうかもわからないわけだ」

「さて、記憶とはあやふやなものです」響野はつづける。「脳の中にノートブックがあり、中を覗いてみると、思い出すべきことが日本語で丁寧に描かれている。大事なところにはマーカーまで引かれている。そんなことは決してありません。記憶というのはしょせんは脳の中のシナプスの伝達活動によって生じるものです。シナプスの電位変化が記憶となるのです。何年経っても同じ形状で残っている保証はどこにもないでしょう。それこそ記憶とは、思い出そうとしている今この瞬間の自分によって新たに創り出された、『記憶と思われるもの』にすぎないのです。創造物です。まさに、『歴史』が、権力者によって捏造された共通認識であるのと似ています。記憶は生のまま氷温保存されるわけではないのですよ」

「あなたが葉書を書く未来も、書かない未来もあるということです。未来はいくつもの枝葉に分れています」