雨が卯の花を腐した後すぐ梅雨に続き、そのまま惰性のように降り続ける

私自身みじめな気持になったのはその時が最初でした。梅雨が私を弱くしているのを知りました。

この梅雨はすべての表面も根も腐らせてしまうほど 陰鬱 なものだ

（夏の雨）大粒の茹だった雨が屋根瓦を強く叩く

梅雨どき特有の風を伴わないまっすぐな雨

空を厚みのある雲が覆っている。

曇空には雲が暗澹（あんたん）と動いていた。

ササササと日が翳（かげ）る。風景の顔色が見る見る変わってゆく。

ぼんやりとした灰色に夜のブルーが混じり、注意して見なければそこに雲があることすらわからないほどだったが、それはあいかわらずじっと身をひそめた盲目の巨大な獣のように空にかぶさり、月や星の姿を背後に覆いかくしていた。 　まるで海底を歩いているみたいだな、と僕は思った。

どうも晴れそうもなく、鉛を張ったように厚く重く垂れさがった曇り方

瓦斯体のような若芽に煙っていた欅や楢の緑にももう初夏らしい落ちつきがあった。

あんまりお天陽様が強いので、何もかもむき出しにぐんにゃりしている。

空気はまだ、夏の緑の匂いがした。

誘導棒の赤い光に羽虫が集まっていて、それを振り払おうと棒をいたずらに振ったら蛾に当たり、殴られた蛾はアンバランスな低空飛行をしばらく続けた後、砂利の上で動かなくなった。もうそういう季節になってきている。

八（や）つ口（くち）の綻（ほころ）びから秋風（あきかぜ）が断わりなしに膚（はだ）を撫（な）でてはっくしょ風邪（かぜ）を引いたと云う頃

鳥井は講義棟を背にし、僕をまっすぐに見た。建物の後ろに太陽が隠れていたが、そこからはみ出した陽射しが、こちらを狙うように射し込んできた。鳥井の左肩にその光が反射し、僕には一瞬、彼の左腕が見えなくなった。

抜けるような青空のもと

夕暮の光はさきほどより力を失い、土間の隅には夕影が少しずつ忍びこみはじめた。

空は雲一つなく冴え渡っている

正面の窓から陽が射し込み、麻生氏の言葉に太鼓判を押すかのように、白々と光った。