赤児の一寸ばかりに延びた生毛（うぶげ）が風におののいている。

早い時間の朝の陽ざしは澄んでいて、窓ガラスを素直に通り抜けて彼女の肌に当たる。彼女は自分の腕の産毛が金の鎖のように、やわらかく動くのを感じる。

タワシのようなこわい胸毛

水蜜桃のように生ぶ毛の生えたあの頬

熊みたいに恐ろしく毛深い

（エコー写真）その写真を見せられた時、凍りついた夜空に降る雨のようだと思った。《…略…》夜空は深く清らかな黒色で、じっと見続けているとめまいがしそうだった。雨ははかない霧のように空を漂っていた。そしてその霧の中に、ぽっかりそらまめ型の空洞が浮かんでいた。《…略…》そらまめ型の空洞に目を凝らした。夜を濡らす霧雨の音が聞こえてきそうだった。その空洞のくびれた隅にひっかかっているのが赤ん坊だった。それはもろい影の塊で、風がふくと夜の底へはらはら舞い落ちていきそうだった。

玉のような子が生まれる

（赤ん坊は）指をしゃぶりながら綿のように寝入っている。

生れたての、玄米パンよりもホヤホヤな赤ん坊

赤児の一寸ばかりに延びた生毛（うぶげ）が風におののいている。

日に当たらぬための蒼白い皮膚の印象からか、いたいけな鉢植えの草花を思わせる少女

この時間帯に機嫌が悪いのは眠たいからだ。

あたしの手は動く、足も動く、動かしかたなんかわかってないのに、色々なところが動かせることは不思議。あたしはいつのまにか知らんまにあたしの体のなかにあって、その体があたしの知らんところでどんどんどんどん変わっていく。こんな変わっていくことをどうでもいいことやとも思いたい、大人になるのは厭なこと、それでも気分が暗くなる。

涙が出るほど可愛い赤ちゃん

疲労が一晩でなおるのも、やはり若さのせいだった。

彼女の手の平から流れる汗と彼のそれは混じり合い、シーツの上に熱いしみを作った。

冷や汗がじっとり肌にしみる

体格は良いが、ニキビが額に残っている。顔には若者特有の、感情を箱に閉じ込めたような暗さもあった。

（喧嘩の痕）鼻にいたっては、紫色に膨張して、掘ったら中から膿が出そうに見える。

始終吹き出物でもしそうな、膿（うみ）っぽい女