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時々ものにおびえるように、しわがれた声で、うめいている。一時ひとときあいだ、ここにこうしているのか、それとも一年も前から同じように寝ているのか、彼の困憊こんぱいした心には、それさえ時々はわからない。目の前には、さまざまな幻が、瀕死ひんしの彼をあざけるように、ひっきりなく徂来そらいすると、その幻と、現在門の下で起こっている出来事とが、彼にとっては、いつか全く同一な世界になってしまう。彼は、時と所とを分かたない、昏迷こんめいの底に、その醜い一生を、正確に、しかも理性を超越したある順序で、まざまざと再び、生活した。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:87% 作品を確認(青空文庫)
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瀕死・虫の息
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前後の文章を含んだ引用
......、それぞれけがの手当てにいそがわしい。  中でも、いちばん重手おもでを負ったのは、猪熊いのくまおじである。彼は、沙金しゃきんの古いうちぎを敷いた上に、あおむけに横たわって、半ば目をつぶりながら、時々ものにおびえるように、しわがれた声で、うめいている。一時ひとときあいだ、ここにこうしているのか、それとも一年も前から同じように寝ているのか、彼の困憊こんぱいした心には、それさえ時々はわからない。目の前には、さまざまな幻が、瀕死ひんしの彼をあざけるように、ひっきりなく徂来そらいすると、その幻と、現在門の下で起こっている出来事とが、彼にとっては、いつか全く同一な世界になってしまう。彼は、時と所とを分かたない、昏迷こんめいの底に、その醜い一生を、正確に、しかも理性を超越したある順序で、まざまざと再び、生活した。 「やい、おばば、おばばはどうした。おばば。」  彼は、やみから生まれて、やみへ消えてゆく恐ろしい幻に脅かされて、身をもだえながら、こううなった。すると、かたわらから額......
単語の意味
嘲る(あざける)
嗄れる(しゃがれる・しわがれる・かれる)
嘲る・・・馬鹿にして悪く言ったり笑ったりする。
嗄れる・・・かすれる。声に潤いがなくカサカサしている。
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