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暗い電灯の光に透かして点滴瓶からレモン色の液体がゆっくりと管を伝わって足首の静脈に入ってゆくのを寝ながら眺め、生命の充実を感じた。点滴は雨後の雨だれよりも悠長だったが、それは彼にこれからの人生の長さと、決して急いではならない仕事の重さとを教えているようであった。
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 ページ位置:18% 作品を確認(amazon)
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命拾い・九死に一生を得る
点滴
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前後の文章を含んだ引用
......い大きな幸運はあるまい。 単に命が助かっただけではない。一旦は絶望していた仕事への希望が戻ってきた。考えついた新しい仕事に全力で立ち向うことができる。 桑木は、暗い電灯の光に透かして点滴瓶からレモン色の液体がゆっくりと管を伝わって足首の静脈に入ってゆくのを寝ながら眺め、生命の充実を感じた。点滴は雨後の雨だれよりも悠長だったが、それは彼にこれからの人生の長さと、決して急いではならない仕事の重さとを教えているようであった。彼は陰気な、暗い重症患者室に横たわってはいたが、心は早くも画室にあった。それから、写生のために車を走らせている運転台の自分の姿も浮んだ。 四日後に、桑木はその暗......
単語の意味
悠長(ゆうちょう)
悠長・・・のんびりしていて慌てる気配がないさま。落ち着いていてのん気なさま。
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命拾いしたのだからこれくらい大きな幸運はあるまい。 単に命が助かっただけではない。一旦は絶望していた仕事への希望が戻ってきた。
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
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小さなしずくがゆっくり落ちていくのを、気が遠くなるような気持ちで眺めていても、やはりいつかは袋が空になって、薄紅色の血液が管を逆流し始める。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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気の強い人ならきっと自殺をしたのだけれど、温和しい人だけにそれも出来なかったのだ。
伊藤左千夫 / 野菊の墓
友子が実は生きているのか、死んでいるのか目覚めてしばらくはさっぱりわからなかった。ひどいものだった。人前で一日せっかく普通の一日をふるまって取り戻しても、眠って目覚めたとたん暗い暗いふりだしに戻ってしまうのだ。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
枯れた花が落ちるように、あっけなく息を引き取る
平岩 弓枝 / 風の墓標 amazon
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足もとから疲労がドッと押し寄せて来て、ヘナヘナと縁先に腰を落とす
阿刀田 高 / ナポレオン狂 amazon
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