霧の底に沈んで鋼鉄のように青ざめた町

この町、少し古びていて少し整然としている建物や、広い道路にふちどられている場所。

入り込んだ町で、昼間でも人通りは少なく、魚の腹綿（はらわた）や鼠の死骸は幾日も位置を動かなかった。両側の家々はなにか荒廃していた。自然力の風化して行くあとが見えた。紅殻（べにがら）が古びてい、荒壁の塀（へい）は崩れ、人びとはそのなかで古手拭のように無気力な生活をしているように思われた。

人通りの絶えた四条通は稀（まれ）に酔っ払いが通るくらいのもので、夜霧はアスファルトの上までおりて来ている。両側の店はゴミ箱を舗道に出して戸を鎖（とざ）してしまっている。所どころに嘔吐（へど）がはいてあったり、ゴミ箱が倒されていたりした。喬は自分も酒に酔ったときの経験は頭に上り、今は静かに歩くのだった。

空気は暖かく乾き、軽やかで、ガソリンの匂いが心地よく葉のない並木の梢に漂っている。

村落の茅屋が落ち葉をもたげて出た茸のよう

前を向いても上を見上げても、高層ビルのせいで空が小さく見えるニューヨーク

まるで時なんて流れていないかのように、いつまでも昔とおなじ風景。

アンペラ張りの店

銀の鱗を並べたような人家の屋根が連なる