翻す事はできないとあきらめていた。運命に従順な羊のように、しかし執念 く将来の希望を命にして、現在の不満に服従しようとしていた。
有島武郎 / 或る女(前編) ページ位置:94% 作品を確認(青空文庫)
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諦める
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前後の文章を含んだ引用
......国させるほうが安全だという最後の宣告を下されてしまった。木村はその時にはもう大体覚悟を決めていた。帰ろうと思っている葉子の下心 をおぼろげながら見て取って、それを翻す事はできないとあきらめていた。運命に従順な羊のように、しかし執念 く将来の希望を命にして、現在の不満に服従しようとしていた。 緯度の高いシヤトルに冬の襲いかかって来るさまはすさまじいものだった。海岸線に沿うてはるか遠くまで連続して見渡されるロッキーの山々はもうたっぷりと雪がかかって、......
単語の意味
翻す(ひるがえす)
羊(ひつじ)
不満(ふまん)
羊・・・ウシ科の哺乳動物。ヤギに似た、中型の大人しい家畜。らせん形の角がある。毛は灰白色で、柔らかくて巻き縮む。性質は臆病で、集団をつくって生活する。毛は毛織物の原料で、肉は食用。
不満・・・満足できないこと。また、そのさまやそういう気持ち。不満足。
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