顔そのものとしてはどちらかと言えば普通にととのった、流通性のある美しさに属するものにすぎなかった

五、六年前はさぞ美しかったであろう顔

僕は息を呑み、呆然と彼女を眺めた。口はからからに乾いて、体のどこからも声はでてこなかった。白いしっくいの壁が一瞬波打ったように思えた。店内の話し声や食器の触れ合う音がぼんやりとした淡い雲のようなものに姿を変え、そしてまたもとに戻った。波の音が聞こえ、懐しい夕暮の匂いが感じられた。しかし、それらは何もかもほんの何百分の一秒かのあいだに僕が感じたもののほんの一部にすぎなかった。

整い過ぎた顔立は、彫刻した人形のように取澄した感じで

人の心をかき乱すような種類の美しい顔立ち

君の寝顔は憂鬱な白薔薇のようで素敵だよ。

紅のない自分の顔は 淋しすぎる。

陽の光が平たいその顔を余計に平たく見せる。

真っ青になる

気むずかしい顔をしている青年である。だがよく見ると、捨て難い精神的な、寂しい表情の内に、誠実さが感じられ、積極的で精神力の強そうな、頼もしさを感じさせる賢そうな顔をしている。