鳩が豆鉄砲を食ったよう

意外という顔つき

びっくりして目が丸くなる

神隠しにあったみたいにぽかんとした顔つき

びっくりして声を上げそうになる

ぼーっとする

驚いてどもる

言葉を失って、それをごまかすように、冷め始めた料理に箸をつけた。

びっくりしたようにまた引っ込めて

狼狽したような妙な瞬きをする

びっくりして悲鳴を上げる

びっくりして泣き止む

びっくりして足を止める

びっくりして声を上げそうになる

びっくりして目を開く

（訃報の手紙の）文面に目を通して、「……は？」と腹を立てたかのように声を上げた。

胆力が欠けている。先生と大きな声をされると、腹の減った時に丸の内で午砲（どん）を聞いたような気がする。

「あ」とも「が」ともつかない、ひしゃげたような満喜子の声が聞こえた。

（開けてはいけないと感じる不吉なガラスビンを前にして起こる恐怖と好奇心の葛藤）息を詰めたまま金属製のねじ蓋に手をかける。蓋は強く締まっている。このおかしな感じ、まるでガラス壜ではない何かをこじ開けて、口で言えないほど不吉なものを解き放とうとしているような感じはどこからくるのだろう？ 　フレテハイケナイ――カンガエテハイケナイ――。 　声がまた聞こえる。頭のなかではなく、天井のあたりから降ってくる気がする。キョトキョトと周囲を見回す。部屋の空気が重く脈打っている。ベッドも衣類も壁もどくんどくんと脈打っている。蓋にかけた手が震える。震えが背筋を伝い、正座したまま上半身が他愛なく揺れる。《…略…》頭のなかにも部屋のなかにも動悸が響き渡る。嵐のようなその音のほか何も聞こえなくなる。まるで自分自身の心臓の内部にいるみたいだ。視界全体が拍動する。どくんどくんと叫ぶ。イケナイ、イケナイ、イケナイ、イケナイと叫ぶ。頭が割れる！　壜から手を離し、両側から強く 頭蓋 を挟みつける。

みぞおちを打たれたように声も立てられない

ぎょっと驚いて立ちすくむ

一驚を喫する

どきり、と心臓の鼓動が大きくなった

血がスーッと上って谷底へ落ちていくような気がする

あいそがつきて腹をたててしまう

華やいで笑う二人の中年女を見ていた。ランプに照らされた二人のつるつるした笑顔は日常に見せるそれとは全く違って、本当に時間をこえてここにいるように若く、希望に満ちていた。

ほっと安心した顔の瞬間、入れ違いに顔の上に混乱が広がる

石のように黙りこくっている

好もしいものを見るという幸福な顔

子供のように頭を振っていやいやする