五か月の長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬいた北人の心に、もう少しでひねくれた根性にさえなり兼ねた北人の心に、春の約束がほのぼのと恵み深く響き始める。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:74% 作品を確認(青空文庫)
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晩冬・春先
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前後の文章を含んだ引用
......。冬はあすこまで遠のいて行ったのだ。そう思うと、不幸を突き抜けて幸福に出あった人のみが感ずる、あの過去に対する寛大な思い出が、ゆるやかに浜に立つ人の胸に流れこむ。五か月の長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬいた北人の心に、もう少しでひねくれた根性にさえなり兼ねた北人の心に、春の約束がほのぼのと恵み深く響き始める。 朝晩の凍 み方はたいして冬と変わりはない。ぬれた金物がべたべたと糊 のように指先に粘りつく事は珍しくない。けれども日が高くなると、さすがにどこか寒さにひびがいる......
単語の意味
仄々・仄仄(ほのぼの)
厳冬(げんとう)
牛(うし)
仄々・仄仄・・・わずかな暖かみや明るさを感じ、好ましい印象を受けるさま。ほんのり暖かい。ほんのり心暖まる。ほのかに明るい。うすうす。「仄」は訓読みで「ほの(か)」と読め、「わずかに感じられるさま」をあらわす字。同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
厳冬・・・冬の寒さが一番厳しいころ。寒さの厳しい冬。
牛・・・ウシ科の哺乳動物の総称。古来より、耕作などの労働力としても使われる重要な家畜。体は頑丈で頭に二本の角を持ち、尾は細い。草などを食い反芻(はんすう)する。和牛は黒色のものが多く、朝鮮牛は赤褐色で小形。肉・乳は食用、皮・骨・角などでもさまざま作られる。
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晩冬・春先の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
雪解けの清冽な水が土壌を洗う春
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
街は寒く、人々はコートを着込んでいたが、陽ざしにはかすかな春の匂いがした。まるで何か新しくて甘いものみたいに、ほんの少しだけ光っていた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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(梅の花の雄蘂は)一本一本が白金の弓のように身を反っていた小さい花粉の頭を雌蘂に向って振り上げていた。
川端 康成 / 春景色「伊豆の踊子・温泉宿 他四篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
振って振りこむ花槍は 雪かあらぬか さっさ ちらちら白鳥毛
吉川英治 / 無宿人国記
若草の芽も一晩のうちに伸びるような暖かい春の宵
島崎藤村 / 伸び支度 amazon
「冬」カテゴリからランダム5
冬の、あたたかい午後である。 陽ざしが早春のそれのように、きらめいていた。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
春もやや準備が出来たといった工合 に、和やかなものが、晴れた空にも、建物を包む丘の茂みにも含みかけていた。
岡本かの子 / 母子叙情
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