外に出た満喜子は、門扉に手をかけたところで立ち止まった。雪見がいたときより 醒めた眼になり、腹を割るという空気を発した。

（別れを告げようとする）シンイチの胸には熱い塊りがつかえていた。

（十歳の少女が十歳の少年の手を握って、）彼女が求めているのは、自分の感情を天吾にしっかり送り届けるという、ただそれだけのことだ。それは小さな固い箱に詰められ、清潔な包装紙にくるまれ、細い紐できつく結ばれている。そのようなパッケージを彼女は天吾に手渡していた。　そのパッケージを今ここで開く必要はない、と少女は無言のうちに語っていた。その時がくれば開けばいい。あなたは今これをただ受け取るだけでいい。

じっと人の目を見つめ、切々と、縷々と、思いの丈を訴える

いくら言葉で打ち明けても、そこにあったギリギリの心情は半分も伝わらないだろう

お帰り、という言葉を十和子からまんまと引きだす陣治が憎い。大切なものを盗み取られている気分だ。

言葉を用意していたが、急に頭が混乱して切り出す言葉に迷う

「ねえねえねえ」オレは、ハルがひとりで固めていた空気を壊すように、ばしばしと机を叩く。

小学生のグループが自転車に乗ってやってきた。広場のほうで賑やかに繰り広げられる話し声が、気詰まりになっていた雰囲気を和らげた。

壁にぶつけたボールのように、すぐに【りょうかーい】という返事がきた。