なんという美妙な美しい色だ。冬はあすこまで遠のいて行ったのだ。そう思うと、不幸を突き抜けて幸福に出あった人のみが感ずる、あの過去に対する寛大な思い出が、ゆるやかに浜に立つ人の胸に流れこむ。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:74% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
晩冬・春先
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......後なぞに波打ちぎわに出て見ると、やや緑色を帯びた青空のはるか遠くの地平線高く、幔幕 を真一文字に張ったような雪雲の堆積 に日がさして、まんべんなくばら色に輝いている。なんという美妙な美しい色だ。冬はあすこまで遠のいて行ったのだ。そう思うと、不幸を突き抜けて幸福に出あった人のみが感ずる、あの過去に対する寛大な思い出が、ゆるやかに浜に立つ人の胸に流れこむ。五か月の長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬいた北人の心に、もう少しでひねくれた根性にさえなり兼ねた北人の心に、春の約束がほのぼのと恵み深く響き始める。 朝晩......
単語の意味
胸(むね)
ここに意味を表示
晩冬・春先の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
雪解けの清冽な水が土壌を洗う春
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
一面を覆っていた雪が溶けて、沢の水が音を立てて流れ始める春の日
永井路子 / 朱なる十字架 amazon
このカテゴリを全部見る
「春」カテゴリからランダム5
梶井基次郎 / 雪後
昼のうちむれていたアスファルトから生温かい風が吹いている或る晩
小林多喜二 / 党生活者
「冬」カテゴリからランダム5
一面を覆っていた雪が溶けて、沢の水が音を立てて流れ始める春の日
永井路子 / 朱なる十字架 amazon
風が澄んだ音をたてて凍りつくような、冷たい夜だった。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
春 の表現の一覧
冬 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ