油揚げは脇役だということである。 「パートナーを立てる」という精神を片時も忘れない性格も、人々の好感をさそったようだ。 　自らリーダーシップを取ることなく、周囲との協調を大切にする、というのが油揚げの生き方である。《…略…》油揚げ自体は、それほど味のあるものではない。 　しかしこれが、ひとたび味噌汁の中にひたされると、味噌汁やダシの味を吸いこみ、自己の味と同化させ、嚙みしめたとき、油揚げ独特のあの滋味あふれる味となる。自分を強く主張することを避け、周囲との同化によって自分の持ち味を引き出す。しかもそれが自分の実力以上の力を発揮する結果となっているのである。《…略…》「人の行く裏に道あり、花の山」 　これが油揚げの処世術なのである。

稲荷ずしに於ける油揚げは、おかずではなく一種の皮である。 　おにぎりに於けるノリと同じように、一種のパッケージともいえる。

揚げ立ての油揚げは、ふんわりしていて香ばしい

黄色っぽくてふわんとたよりない

油揚げを厚く焼いてお醤油をつけたもの、それをホカホカのご飯で食べた時のおいしさ。あの頃の油揚げはどうしてあんなにうまかったのだろう。

湯豆腐には大根をうすく切ったものを入れると、豆腐が白くふっくらと、おいしく煮える。まことに食物の取合せはふしぎなものなり。

色が濃く、ぽつぽつとすが入っている。でもそれだけに大豆の風味が生きているし、豆腐屋のように重石でしめていないぶんだけ、もろもろと柔らかい。

呉汁の表面に浮かんでいるのは、大豆のたんぱく質

うまさと湯気の温かさが未だに忘れられない

普通のよりもはるかに弾力に富み、そしてネットリと濃厚