TOP > 暮らしの表現 > 生と死 > 喪失感(大切なものを失う)
「死んだ妻のことを考えると、暗い深い穴に落ちていく感覚に襲われます。もしくは、妻は今でも、広大な砂漠に取り残されているのではないか、ってそんな気分になるんです。彼女は暗黒の砂漠の中で、声も出なければ音も聞こえず、何も見えなくて、不安を覚えながら、永遠に漂い続けていて、その孤独を、僕は救ってあげることができない。彼女を見つけることもできず、うっかりすると、彼女のことを忘れていることだってある。暗黒の、広漠な土地に放置された、巨大な心細さと悲しみしかありません」
伊坂 幸太郎 / マリアビートル ページ位置:89% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
喪失感(大切なものを失う)
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......に、かつて見た悪夢に飛び込み、戻ってこられなくなったような目つきになった。意味不明なことを呟きかけ、その後で首を左右に振り、また意識を取り戻した、という具合だ。「死んだ妻のことを考えると、暗い深い穴に落ちていく感覚に襲われます。もしくは、妻は今でも、広大な砂漠に取り残されているのではないか、ってそんな気分になるんです。彼女は暗黒の砂漠の中で、声も出なければ音も聞こえず、何も見えなくて、不安を覚えながら、永遠に漂い続けていて、その孤独を、僕は救ってあげることができない。彼女を見つけることもできず、うっかりすると、彼女のことを忘れていることだってある。暗黒の、広漠な土地に放置された、巨大な心細さと悲しみしかありません」「難しくて何言ってるのか分からねえけどな、何だかいい人だな、あんた。よし、あんたの塾に、渉を通わせるよ」男は冗談めかしつつも、本気の眼差しで、「名刺をくれよ」と......
単語の意味
暗黒・闇黒(あんこく)
永遠(えいえん・とわ)
広漠・宏漠・曠漠(こうばく)
暗黒・闇黒・・・1.暗いこと。暗闇であること。光が一切になく真っ暗な状態。
2.1が転じて、希望が持てない状態。世の中の秩序が乱れたり人命が軽視されたりすること。また、文明が遅れていること。「暗黒街」
2.1が転じて、希望が持てない状態。世の中の秩序が乱れたり人命が軽視されたりすること。また、文明が遅れていること。「暗黒街」
永遠・・・ある状態が果てしなく続くこと。物事が変化しないこと。無窮(むきゅう)。永久(えいきゅう)。
広漠・宏漠・曠漠・・・広々としてどこまでも広がっている様子。
ここに意味を表示
喪失感(大切なものを失う)の表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
いずれにしても、弟はもういない。わたしはこの事実を何回も確認させられた。大学から授業料滞納の通知が届いた時、弟のパジャマを洗濯してアイロンをかけてクローゼットの奥にしまった時、弟のいた病室の扉に別の名札が差し込まれているのを見た時。そのたびにわたしは、「もうわかった。わかったから、そっとしておいて。」とつぶやいた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
(喪失感をまぎらすためにジョギングを始めた私と亡くなった彼女のセーラー服を着て過ごす柊という男)彼のセーラー服は私のジョギングだ。全く同じ役割なのだ。私は彼ほど変わり者でないので、ジョギングで充分だっただけのことだと思う。彼はそのくらいでは全くインパクトに欠けて自分を支えるにはもの足りないのでバリエーションとしてセーラー服を選んだ。どちらもしぼんだ心にはりを持たせる手段にすぎない。気をまぎらわせて時間をかせいでいるのだ。 私も柊もこの二カ月で、今までしたことのない表情をするようになった。それは失ってしまったものを考えまいと戦う表情だった。ふっと思い出して突然に孤独が押してくる闇の中に立っていると知らず知らずのうちにそういう顔になってしまうのだ。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「心」の言葉を含む悲しみの表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
足を進めることを、生きてゆくことを心底投げ出したかった。きっと明日が来て、あさってが来て、そのうち来週がやってきてしまうに違いない。それをこれほど面倒だと思ったことはない。きっとその時も自分が悲しい暗い気分の中を生きているだろう、そのことが心からいやだった。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
悲しみの比喩表現の例文 一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
生と死の比喩表現の例文 一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「悲しみ」カテゴリからランダム5
「生と死」カテゴリからランダム5
(自殺した友子)そしてわかった。自分が実は友子を恨んでいるということ。あの夜彼女は自分の言いたいことだけ言い、思い残すことなくこの世を去り、智明の心だけがあの夜の中に置き去りにされたこと。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
やり残したことの多い、あまりに唐突な死だった。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
(父の死)父さんも母さんも同じだけ好きだったはずなのに、てんびんの片方の皿がなくなってしまってからは、それをどう確かめていいかわからなくなってしまった。
朝井 リョウ / 僕は魔法が使えない「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
悲しみ の表現の一覧
悲しみのレベル
悲しみの感覚、精神的な反応
悲しみの表情、リアクション
その他の悲しみの表現
次の文字を含む「悲しみ」の表現を検索 |
悲しさが 悲しみを 悲しくて 悲しさ 悲しい 心 哀感 胸 寂しさが 寂しさ |
生と死 の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ