全てがまぶしく光って見える真夏の街中は熱気がこもっているような感じだった。渋滞した道路も、ぴたりと動かない街路樹の影も、ビルの形も、みな暑さをこらえているようだ。

光の中に棘があって、剣山で素肌を刺すような暑さ

京浜国道は残暑の日盛りにまるでフライパンのように焼けていて

真夏のジットリした暑さがこもった家の中

天気は前夕の雨で洗われて一層綺麗に晴れ、何を考えても直ぐ蒸発してしまうような夏の日であった。

蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。

蒸し暑さが一挙に霧散するような豪快な雨

麦秋（むぎあき）によくある薄曇りの日

（黒玉、発火しない失敗した打ち上げ花火）宙へあがった八寸玉は、雲の中へでもはいってしまったようにいつまで何の光もない。 　どかア――ん。 　莫迦（ばか）みたいな音が、真っ暗な空の奥にひびいた。

ベランダにぶら下がっている風鈴が、うるさいくらいにちりちり揺れた。