河口湖で過ごした二日間の思い出は、月曜日になってみればもう触れられない位置でからころと切ない音を鳴らす。

遠い昔のかすかな記憶

胸の中に抱いていた写真を破いて捨てる

青春の日々が不知火のように浮かんでは揺れる

感傷の気分で染めあげた嘘八百の美しい追憶

姿が一枚の写真のようにはっきりと浮かんでくる

音が聞こえるのは、わたしの心が学生寮にさかのぼってゆく間の、ほんのわずかの時間だ。頭の中が広々とした雪の草原のように真っ白になり、高い高い空の果てで何かが微かに響いている。

耐え難いほどの黒い記憶

過去にまっすぐつながっている時間の感覚の帯に、一ヶ所なぜかひどく霞んだ部分があって、音はそこにひっそりと存在している。ある時ふと気が付いたら、わたしはもうそれを聞いていた。いつ、どこからやってきたのか、分らない。透明なシャーレの培養基の中に、突然微生物が精巧な斑点模様を描き出すように、音はどこからともなくやってきた。《…略…》音が聞こえる時わたしの心は常に過去の特別な場所に向かっているということだ。そして微かな胸のきしみを伴っている。

目の奥にいつまでも残った。