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この出船の時の人々の気組み働きは、だれにでも激烈なアレッグロで終わる音楽の一片を思い起こさすだろう。がやがやと騒ぐ聴衆のような雲や波の擾乱 の中から、漁夫たちの鈍い Largo pianissimo とも言うべき運動が起こって、それが始めのうちは周囲の騒音の中に消されているけれども、だんだんとその運動は熱情的となり力づいて行って、霊を得たように、漁夫の乗り込んだ舟が波を切り波を切り、だんだんと早くなる一定のテンポを取って沖に乗り出して行くさまは、力強い楽手の手で思い存分大胆にかなでられる Allegro Molto を思い出させずにはおかぬだろう。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:33% 作品を確認(青空文庫)
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忙しい・多忙・慌ただしい
働く・労働
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前後の文章を含んだ引用
......のように船の上に飛び乗っている。ややともすると、舳 を岸に向けようとする船の中からは、長い竿 が水の中に幾本も突き込まれる。船はやむを得ずまた立ち直って沖を目ざす。 この出船の時の人々の気組み働きは、だれにでも激烈なアレッグロで終わる音楽の一片を思い起こさすだろう。がやがやと騒ぐ聴衆のような雲や波の擾乱 の中から、漁夫たちの鈍い Largo pianissimo とも言うべき運動が起こって、それが始めのうちは周囲の騒音の中に消されているけれども、だんだんとその運動は熱情的となり力づいて行って、霊を得たように、漁夫の乗り込んだ舟が波を切り波を切り、だんだんと早くなる一定のテンポを取って沖に乗り出して行くさまは、力強い楽手の手で思い存分大胆にかなでられる Allegro Molto を思い出させずにはおかぬだろう。すべてのものの緊張したそこには、いつでも音楽が生まれるものと見える。 船はもう一個の敏活な生き物だ。船べりからは百足虫 のように艪 の足を出し、艫 からは鯨のように......
単語の意味
擾乱(じょうらん)
沖(おき)
熱情(ねつじょう)
擾乱・・・入り乱れること。騒ぎ。秩序が乱れること。
沖・・・海や湖の岸から離れた所。
熱情・・・感情が熱を持っている心理状態。ある目標や物事に向かって一生懸命真剣に向き合うさま。また、そういう気持ち。激しく高まった気持ち。情熱(じょうねつ)。
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朝から晩まで機械のごとく働かねばなりません
有島武郎 / 或る女
躯をすりへらしてこっぱみじんの働きぶり
林芙美子 / 新版 放浪記
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(ガラス壜を)手を伸ばして赤ん坊のように膝に抱きとる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
押入れに順序も見境いもなく、ゴミ溜めにゴミ屑を入れるように一切合財がほうり込まれる
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
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「わたしがピアノのために犠牲にしてきたのは いろんなこと なんかじゃない。 あらゆること よ。わたしの成長過程に含まれたことのすべて。ピアノはわたしに、わたしの肉や血をまるごと、 供物 として要求していたし、それに対してわたしはノーと言うことはできなかった。ただの一度も」
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
曇った硝子の表面がみるみる澄明になっていくみたいに疑問が解ける
松本 清張 / 空白の意匠―松本清張短編全集〈10〉 amazon
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