その時、東の空に流れる星が見えた。星は一筋の短い線を引いて消えた。

無数のきらめく光が──まるで空にもうひとつの東京が覆い被さったように、そこにはあった。それは夢の景色のように、ただひたすらに、美しい眺めだった。

大気との摩擦熱で燃え上がり、岩塊がガラス質となり、宝石のように輝いている。

視線のまっすぐ先の夜空に唐突に、巨大な彗星があった。長くたなびく尾はエメラルドグリーンに輝いていて、その先端は月よりも明るかった。目を凝らすと、細かな塵のような粒がその周囲にきらきらと舞っていた。

青く輝く彗星の尾が夜空の半球にわたってたなびく

夏の過酷な太陽

どんよりと垂れこめた雨雲の下に、墨絵のような風景が展（ひら）ける

むんむんする

弱い光の日が落ちてからは寒気が星を磨き出すように冴えて来た。

月は西の空まで白い波のように長く拡がっている雲の端に隠れ、ちょうど月を隠している雲の端は、内から洩れ出る輝きに光を噴き出しているかのように見える。