かまぼこ板が表札代わりにしてあった。

そこはスラムと呼んでいいくらいの貧しい町だった。 　バラックのような長屋が並び、住人たちも貧しかった。町全体から鼻を突くような臭いがした。

床板はやわらかい部分から波形に擦り減っていて、通路を歩くと体が左右に揺れた。

離れは質素を通り越して見すぼらしかった。素っ気ないコンパクトな平屋造りで、止むを得ず渋々そこに建っているかのような気配を漂わせていた。その気配を覆い隠すためか、離れの周囲だけ、手入れをされていない樹木が伸び放題に茂っていた。玄関は日当たりが悪く、呼び鈴は壊れて鳴らなかった。

外観と同じく、離れの内部もやはり寒々としていた。ダイニングキッチンと書斎兼寝室の二部屋しかないのだが、狭さよりも味気なさの方が目立っていた。家具はどれも安物で、壁紙はくすみ、廊下は気味の悪い音を立てて軋んだ。また呼び鈴だけでなくあらゆるものが壊れるか、壊れそうになっていた。トイレの小窓にはひびが入り、勝手口のドアノブは半分取れかけ、食器戸棚の上にあるラジオは、いくらスイッチを押しても鳴らなかった。

大きなスタジアムが見える。巨大な要塞じみた迫力は、現実感を伴っていない。

上を見た。夜を突き刺すかのように、見張り台がそびえている。

引退したパチンコ店というよりは、現役の廃墟

編笠（あみがさ）を被せたような藁屋根

もう何年も前から人の住んでいないような荒れた翳（かげ）がにじんでいる建物の肌