舌足らずで語尾を引きずるような話し方

（答えを濁す）「どうして」とわたしは小声で聞いた。「何か仕事でもあるの？」 　うん、と野呂はわたしから身体を離しながら言った。だが、その「うん」は肯定の「うん」ではなく、何か別の、はっきり口にできない理由を包み隠そうとする時の「うん」だった。

もぐもぐ、むにゃむにゃと

皮肉も感心の響きもない中立的な言い方

わかったようなわからないような禅問答みたいな言い方

（独白みたいな話し方）「ハワイってどうなの？　くわしいでしょ？　今度親戚の結婚式で行くんだ。」 　僕は言った。アップルちゃんは淡々と答えた。 「いつもニューオータニ。なんか彼の仕事の関連で。それでいつもドライブして、屋台でエビを食べて、タートルベイで晩ごはん食べるの。ノースショアのほうが、私は好き。緑と空の色が特別なの。シュノーケリングもするよ。イルカもいるし。亀も。オアフに行くんだよね？」 「そうみたい。」 　僕は言った。 　彼女の話はいつも絵ばかりがどんどん展開する本のようなのだ。そして、いくら目の前にいて、僕に向かってしゃべっていても、独白みたいなのだ。

「おたく自身は、どう考えている」 　重藤の口調が厳しい響きに変わった。

「ひー、揺れる！」「こりゃあかん！」「おかあちゃーん！」 　と口々に悲鳴を上げた。でも、どこか笑いと高揚を含んでいるようだった。スリルも行き過ぎると、たががゆるんで、いろんな感情がブレンドされるらしい。

ボイスチェンジャーを通したような声

声は、よく通る。耳障りな濁りがなくて、すっきり耳に届いてくる