「勝ちゃん。ここ何てとこ?」彼はそんなことを訊 いてみた。 「しょうせんかく」 「朝鮮閣?」 「ううん、しょうせんかく」 「朝鮮閣?」 「しょう―せん―かく」 「朝―鮮―閣?」 「うん」と言って彼の手をぴしゃと叩 いた。 しばらくして勝子から 「しょうせんかく」といい出した。 「朝鮮閣」 牴牾 しいのはこっちだ、といったふうに寸分違わないように似せてゆく。
梶井基次郎 / 城のある町にて ページ位置:32% 作品を確認(青空文庫)
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じれったい・もどかしい
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前後の文章を含んだ引用
......りに口真似をして峻 の手のなかへ入って来た。そして峻は手をひいて歩き出した。 往来に涼み台を出している近所の人びとが、通りすがりに、今晩は、今晩は、と声をかけた。 「勝ちゃん。ここ何てとこ?」彼はそんなことを訊 いてみた。 「しょうせんかく」 「朝鮮閣?」 「ううん、しょうせんかく」 「朝鮮閣?」 「しょう―せん―かく」 「朝―鮮―閣?」 「うん」と言って彼の手をぴしゃと叩 いた。 しばらくして勝子から 「しょうせんかく」といい出した。 「朝鮮閣」 牴牾 しいのはこっちだ、といったふうに寸分違わないように似せてゆく。それが遊戯になってしまった。しまいには彼が「松仙閣」といっているのに、勝子の方では知らずに「朝鮮閣」と言っている。信子がそれに気がついて笑い出した。笑われると勝......
単語の意味
擬き・抵牾・牴牾(もどき)
擬く・抵牾く・牴牾く(もどく)
暫く・姑く・須臾(しばらく)
擬き・抵牾・牴牾・・・1.似せて作ること。また、似せて作ったもの。また、名詞の下に付いて、それに匹敵するほどのもの、また、それに似て非なるものをあらわす。「がんもどき」「梅もどき」
2.非難。非難すること。
2.非難。非難すること。
擬く・抵牾く・牴牾く・・・1.さからって非難する。とがめる。また、従わないでそむく。
2.まねる。何かと張り合うように、似せて作る。また、他と同じように振る舞う。
2.まねる。何かと張り合うように、似せて作る。また、他と同じように振る舞う。
暫く・姑く・須臾・・・1.長いと感じるほどではないが、すぐともいえないほどの時間。ちょっとの間。一時的。
2.ちょっと待った!
2.ちょっと待った!
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一気にとはいかず、かなりもどかしい。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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