血と硝煙の戦場

Ｂ２９が八十機揃ってきて、一どきに天地をひっくりかえすような空襲

焼夷弾が雨のように火の尾を曳（ひ）いて降りそそぐ

（燃え上がる空母）世の中にこれほどの炎があるのかと思われるほどの巨大な火の海に包まれていました。その勢いは凄まじく、百メートル以上離れてもその熱波を感じました。 　しかし「赤城」は沈みませんでした。魚雷攻撃を受けたわけではなく、爆弾ですから、艦自体は燃え上がっていますが、沈むことはありません。だがそれはかえって断末魔の苦しみが長引く地獄のように見えました。

東京の風景は、なんだか乱杭歯の口を思わせる、見たことのないものに変貌していた。 　例の、疎開政策のせいなのだろう、家があったはずの場所が、ぶっきらぼうな更地になっているのだった。中には空襲で壊された家もあったかもしれないが、多くは空襲対策で倒壊させられたものだった。

何度も蹴られて痛いと云う事よりも、思いやりのない男の心が憎かった。

復讐を繰り返したところで、憎しみの連鎖が続くだけ

救いようのないくらいの喧嘩

喧嘩に花が咲く

（決闘は）双方とも大将と副将を置き、陣立を、先陣、中堅、次陣と設け、互いに押しよせてラグビーのように入り乱れて組打ちになった。

「再手術はそんなに厄介ですか？」 　桑木は孝子が口を出す前に云った。 「ええ、はっきり申上げて簡単ではないようです。ちょうど着物を縫うのでも、新しいのを仕立てるよりも、古いのを縫いかえすほうが面倒で手間をとるのと似ていますわ」

爆撃機が、群がる鴉のように、執拗な襲いかかりで町を破壊する

本館の屋上にのぼると、日ごとにＦ市の街が小さくなっていくのがよくわかる。実感としては小さくなると言うよりは焼けた部分が黄いろい砂漠のように毎日、拡っていくのだ。

エメラルドグリーンのサンゴ礁にかこまれた緑の島。

飼い馴らされた犬のように、陽が暮れたら尾をふって、自分の家へ戻っていく