年老いた夫婦のように肩を寄せ合って暮らす

理想の家庭。そう名付けた箱庭に

（妻とのコミュニケーションは）外交そのものだぞ。宗教も歴史も違う、別の国だ、女房なんて。それが一つ屋根の下でやっていくんだから、外交の交渉技術が必要なんだよ。一つ、毅然とした態度、二つ、相手の顔を立てつつ、三つ、確約はしない、四つ、国土は守る。そういうものだ。離婚だって、立派な選択だ。ともにやっていくことのできない他国とは、距離を置くほうがお互いの国民のためだからな

父母の監督によって仕切られた家庭という（鳥）籠

一枚の布を織り上げるようにしてきた二人の生活

こうして二人（ふたり）は底止（ていし）する所のないいずこかへ手をつないで迷い込んで行った。

日々はごく平凡に過ぎていった。

朝から晩まで働いて、六十銭の労働の代償をもらってかえる。土釜を七輪に掛けて、机の上に茶碗と箸（はし）を並べると、つくづく人生とはこんなものだったのかと思った。ごたごた文句を言っている人間の横ッ面をひっぱたいてやりたいと思う。

食糧事情は最悪

戦後の、日本にとっては未曾有の食糧危機は数年つづき、海軍にいたころ、六十キロあった私の体重は四十二キロに減じてしまった。