窓ガラスにあたるたびにこつんという音がした。少し風が吹き始めていて、雪片は三十度ほどの斜めの線を描きながら地上に速い速度で落ちていた。雪がまばらなうちはその斜めの線はデパートの包装紙の柄みたいに見えたが、そのうちに雪が降りしきってくると、外は白くけぶり、山も林もなにも見えなくなってしまった。それは東京に時折降るようなこぢんまりとした雪ではなく、本物の北国の雪だった。何もかも覆いつくし、大地を芯まで凍らせてしまう雪だ。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:85% 作品を確認(amazon)
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雪
吹雪・暴風雪
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前後の文章を含んだ引用
......い鉛色の雲がたれこめていた。僕がランニングから帰ってシャワーを浴び、コーヒーを飲みながらレコードを聴いている時、雪が降りはじめた。いびつな形をした固い雪だった。窓ガラスにあたるたびにこつんという音がした。少し風が吹き始めていて、雪片は三十度ほどの斜めの線を描きながら地上に速い速度で落ちていた。雪がまばらなうちはその斜めの線はデパートの包装紙の柄みたいに見えたが、そのうちに雪が降りしきってくると、外は白くけぶり、山も林もなにも見えなくなってしまった。それは東京に時折降るようなこぢんまりとした雪ではなく、本物の北国の雪だった。何もかも覆いつくし、大地を芯まで凍らせてしまう雪だ。 じっと雪を見つめているとすぐに目が痛くなった。僕はカーテンを下ろし、石油ストーブのそばで本を読んだ。レコードが終り、オートチェンジャーの針が戻ってしまうと、あ......
単語の意味
雪片(せっぺん)
厳し・美し・慈し(いつくし)
雪片・・・ひとひらの雪。空から落ちてくるときの雪の一粒。
厳し・美し・慈し・・・1.格式ばっていて近寄りがたいさま。
2.容姿に普通の人に感じられない、上品さがあるさま。
2.容姿に普通の人に感じられない、上品さがあるさま。
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(アスファルトの上の雪の足跡)白と黒と、しゃりしゃり凍る雪のあずき色
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
小さな小さな乾いた雪のこなが少しばかりちらっちらっと二人の上から落ちて参りました。
宮沢賢治 / ひかりの素足
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吹雪・暴風雪の表現・描写・類語(雪・霜・あられのカテゴリ)の一覧 ランダム5
降りしきる雪と、荒れ狂う水と、海面をこすって飛ぶ雲とで表わされる自然の憤怒
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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空気はきりっとして澄み渡り、街角のいたるところに蟻塚のようにつみあげられ、排気ガスで灰色に染まった雪も、夜の街の光の下では清潔で、幻想的にさえ見えた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
車は、あたらしい雪の降り積む道を、滑り止めの鎖をぱりぱり鳴らしながら走った
三浦哲郎 / 忍ぶ川 amazon
店を出る頃には、雨は雪に変わっていた。 大気にたっぷりと満ちた湿気のおかげか、雪の舞う街は妙に暖かく、俺は間違った季節に迷い込んでしまったような不安をふいに感じる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
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