日の光に照りつけられた大路には、あまりの暑さにめげたせいか、人通りも今はひとしきりとだえて

夏草が背丈よりも高く生い茂る

雨の降らない日が続いた。ソバ屋とガソリン・スタンドをつなぐ畠はたけはすっかり 罅ひび割れて、水気を失った 玉蜀黍とうもろこし の根の間でキリギリスが乾いたくるしそうな声で 喘あえいでいた。

ちゃらちゃらとした涼しい音のする玉のれん

（店内）季節感はゼロ。ただ、異常に効きすぎた冷房だけが季節が夏へと変化していることを知る唯一の手段である。

夏の午後の蒸し暑い沈黙がのしかかる

風鈴が時々ものうく鳴る。

小屋の外は既に薄暗く 窪地 の 樹 々 が、昼のむし暑さに疲れ果てたように、ぐったりとしている。

彼は汽車の窓から 飽かず外の景色を眺めて来た。盛夏の力というようなものが感ぜられ、彼は近頃に珍しく元気な気持になった。

松も新しい緑にかわって、草も木も青い焔（ほのお）のようになった。