手順を暗記するほど作ったキャロットケーキには私の魂のかけらが入ってしまった

塩を煮る湯気が小屋の屋根から太い棒を立てたように穏かな空へ白く立ち昇っている。

御飯がグツグツ白く吹きこぼれていた。

彼女は素早く器用に体を動かしながら、一度に四つくらいの料理のプロセスをこなしていた。こちらで煮ものの味見をしたかと思うと、何かまな板の上で素早く刻み、冷蔵庫から何かを出して盛りつけ、使い終わった鍋をさっと洗った。うしろから見ているとその姿はインドの打楽器奏者を思わせた。あっちのベルを鳴らしたかと思うとこっちの板を叩き、そして水牛の骨を打ったり、という具合だ。ひとつひとつの動作が俊敏で無駄がなく、全体のバランスがすごく良かった。

まな板の上へトントンと包丁を落とす

「若いうちこそ美容院に通い、衣裳店をめぐり、それで男の心をつなぎとめていても、年をとってくると、みんな急にお料理に熱を上げる。ダンナさまを家につなぎとめるものは、おいしい料理だけだから……」

新聞の見出しを点検するときのような目つきで、レタスの葉をフォークで何度か裏返した。

手早く手際よくナイフとフォークを使って食べる女、きれいに骨だけ残ったお皿

この豪華なアイスクリームはアメリカの街角で売られているものとはぜんぜん格がちがう、シャンデリアの輝く広間の正式ディナーにふさわしいアイスクリームだった。

私も少年のころは、なかなかの偏食であったらしいが、戦争中、海軍に入って、それがほとんどなくなった。なにしろ、入隊第一日に、イワシとサツマイモのごった煮を出され、目をまわしたものである。