向こう岸には闇よりも濃い樹の闇、山の闇がもくもくと空へ押しのぼっていた。そのなかで一本椋 の樹の幹だけがほの白く闇のなかから浮かんで見える
梶井基次郎 / 温泉 ページ位置:34% 作品を確認(青空文庫)
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前後の文章を含んだ引用
......やはり自分のあれは本当なんだなと思ったのである。ときどき私はその「牢門」から溪へ出て見ることがあった。轟々たる瀬のたぎりは白蛇の尾を引いて川下の闇へ消えていた。向こう岸には闇よりも濃い樹の闇、山の闇がもくもくと空へ押しのぼっていた。そのなかで一本椋 の樹の幹だけがほの白く闇のなかから浮かんで見えるのであった。 これはすばらしい銅板画のモテイイフである。黙々とした茅屋 の黒い影。銀色に浮かび出ている竹藪の闇。それだけ。わけもなく簡単な黒と白のイメイジである。......
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暗い・闇の表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
有島武郎 / 或る女
闇は不思議に平面的だった。実体のない物質を鋭利な刃物でスライスした切口のようにも見える。奇妙な遠近感が闇を支配していた。巨大な夜の鳥がその翼を広げ、僕の目の前にくっきりと立ちはだかる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
淡い闇が風に吹かれる膜のように都市の上をさまよい流れていた
村上春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート(タクシーに乗った男) amazon
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部屋に戻 った。 そこには寝床のそばに洋服を着た一人 の男が立っていた。激しい外光から暗い部屋 のほうに目を向けた葉子には、ただまっ黒な立ち姿が見えるばかりでだれとも見分けがつかなかった。
有島武郎 / 或る女
黒い獣じみた影
吉川英治 / 野槌の百
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神のように静かな山の姿
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
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樹が狭い地面にひしめきあって、ふくれ上がったようにこんもりしている
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
白い葉裏が雪のように空を覆う樫の木
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
木の幹が白い大蛇のように伸びる
梅本 育子 / 桃色月夜 amazon
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「光と影」カテゴリからランダム5
探照灯は高い塔の上に三台ある。恐龍の首みたいな光の筒は僕達を通過した後、遠くの山々を照らし出している。光の束で切り取られた彼方の雨の一塊は、一瞬凝固し、輝く銀色の部屋となる。もっとも強烈な探照灯はゆっくりと一定の場所を照らして回転する。僕達から少し離れた引き込み線路の上に一定間隔で回ってくる。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
自分が光るのではない 四囲の光線がわっと笑うのだ
林芙美子 / 新版 放浪記
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蝙蝠傘のように枝を広げた、一本の樅(もみ)の木
堀 辰雄 / 美しい村 amazon
菊は一点の瑕瑾(かきん)もない黄いろい端正な花弁をひろげていた。それはまさに小さな金閣のように美しく
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
植え込みのところに蒲公英の花があった。小さな黄色い花弁は、疲れを恐れず、はしゃぐだけはしゃぎ、くたっとそのまま眠り込んだ子供のような、あどけない生命力を感じさせる。地味な緑色をした茎がそれを、よろよろしながら支えている。黄色の小花を包む、緑の皮、その皮の下部が垂れ下がっている。セイヨウタンポポだ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
巻蔓は、空の方へ、身を悶えながらもの狂おしい指のように、何もないものを捉えようとしてあせり立っている
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
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