このまま、なお持っていると、病気にでも取ッつかれそうな気がしていた簪
吉川英治 / 無宿人国記 ページ位置:32% 作品を確認(青空文庫)
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遺品・形見
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前後の文章を含んだ引用
......菩提寺である。 「む、ここか」 と、探しだした、一つの墓。 あたりを見廻した。――梅花 が明るい。 今日まで、肌に、抱いているにも、捨ててしまうにも、気にかかって、このまま、なお持っていると、病気にでも取ッつかれそうな気がしていた簪 を――あの里次の生首 のにおいを持つ簪を――、そっと、墓石のそばの土中へ、ふかく、差し込んだのである。 悪夢を、封じたように、 「ああ、これで、さっぱりだ」 と、一......
単語の意味
簪(かんざし)
簪・・・女性が髪を結うときに使う道具。髪に挿す女性の装飾品。「髪挿し」がなまった言葉。
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一冊の古びたペーパーバック「N・P」と、バインダーと、ロレックスのずっしり重い時計。 これらが、庄司の形見だった。 彼は4年も前に睡眠薬自殺をしたのだ。そしてこれらを手にしたときから、いつも私の心のどこかにこの品々があった。 たとえば昼間、私が働いている大学の研究室で。ふと耳をすますと遠くでサイレンの音が町を駆けてゆくのが聞こえたりするとき、うちの近くかな、と思う、そんなとき必ずこれらが心に浮かぶ。それ位、重い品々だ。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
兄の紀念 とかいう二十年来着古 るした結城紬 の綿入
夏目漱石 / 吾輩は猫である
(遺品のかんざしを)見つめていると、ありし日の女の姿が、ぼっと、眸にひろがって来る気さえする。
吉川英治 / 無宿人国記
(形見のママの日記)それは私の宝物だ。ママの日記、ママの面影。私とママをつないでいるタイムトンネル。そこでだけママに会えるとても哀しい部屋。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
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