クリスマスといえど、１Ｋの部屋はいつも通り。どこも浮かれたところはない。

部屋は妙にがらんとして、何らかの理由で時の流れに置き去りにされた古い世界の一角のように見えた。

実務的でござつばりした部屋

（部屋の中に）彼女の匂いのするものは何ひとつ残されてはいなかった。指紋さえ拭き取っていったんじゃないかという気がした。

この人は住居に愛がない《…略…》箱のようにしか思ってない

（カーテンを閉めて）それでもまだ光は、簡単に消すことのできない古い記憶のように、どこからともなく忍び入ってきた。

この建物の中では時間は奇妙な流れ方をしていた。居間に置かれた旧式の柱時計と同じだ。人々が気紛れにやってきては分銅を巻きあげる。分銅が上っている限り、時はコツコツと音を立てて流れる。しかし人々が去り分銅が下りてしまうと時はそこで止まる。そして静止した時の塊りが床の上に色あせた生活の層を積み上げる。

シンク脇の籠の中では、洗いあがった食器類が水滴を光らせている。

玄関のスイッチをオンにすると、十畳ほどのリビングは百ワットの電球に照らされた

机の上にまで左右バラバラのソックスが散乱している。