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サーモンピンクの細い光りの帯が氷原を染める
三浦綾子 / 続氷点 amazon
じょじょにその夕焼けが去っていくとき、何ともわかれがたい気持ちとすがすがしい感謝の気持ちが混じって、切なくなった。 これからの人生に、たとえ今日のような日はあっても、この空の具合、雲の形、空気の色、風の温度、二度とはないのだ。 同じ国に生まれた人々が、夕方の町をのんびりと歩いていく。夕食の明かりがともる窓が、夕闇の透明なスクリーンに浮かびあがる。 そこにあるすべてが、手を伸ばせば水のようにすくえそうだった。つやめいた 滴 がぽたりぽたりとしたたり落ち、コンクリートにはねかえるとき、去ってゆく昼間の陽の 匂いと、濃い夜の匂いの両方をたたえていそうだった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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