割合に小さな波があとからあとから押し寄せて来て、船を揺り上げたり押しおろしたりした。そのたびごとに君たちは船との縁を絶たれて、水の中に漂わねばならなかった。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:44% 作品を確認(青空文庫)
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転覆・船が沈む
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前後の文章を含んだ引用
......てはすべりしていた。君は大声を揚げて何か言った。兄上も大声を揚げて何か言ってるらしかった。しかしお互いに大きな口をあくのが見えるだけで、声は少しも聞こえて来ない。 割合に小さな波があとからあとから押し寄せて来て、船を揺り上げたり押しおろしたりした。そのたびごとに君たちは船との縁を絶たれて、水の中に漂わねばならなかった。そして君は、着込んだ厚衣 の芯 まで水が透って鉄のように重いのにもかかわらず、一心不乱に動かす手足と同じほどの忙 しさで、目と鼻ぐらいの近さに押し迫った死からのがれ出......
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前を走る自動車のテールランプがたった今見た透明魚の眼のように赤くにじんで、闇に長く尾を引く。
阿刀田 高 / 透明魚「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
車窓を通り過ぎていく見慣れた街のたたずまいが、映画のなかの風景のように細部まで生きいきと際立って見える。
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