灯台のオレンジ色の灯が心臓の鼓動のように、確かな点滅を繰り返している。

遠くの灯台　まわる光が 　　二人の夜には　木もれ日みたい

灯火のあたりだけ、霧は藤紫色にかわり、海が次第に黒みを増しつつある

山の中腹に立つ彼のアパートからは闇の中に雑然とばらまかれた人々の営みをくっきりと見下ろすことができた。時折鼠は両手を腰にやり、まるでダウンヒルのコースに立ったゴルファーのように、何時間も意識を集中してそんな風景を眺めることがあった。《…略…》そして暗い海、海と空の闇は区切りようもないばかりに溶け合い、その闇の中に灯台のオレンジ色の光が浮かび、そして消えた。そしてはっきりと区切られたそれらの断層の間を暗いフェアウェイが一筋貫いている。

灯台はずんぐりと黒く、ちょうど鐘をすっぽりと伏せたような形をしている。考えごとをしている男の後姿のようでもある。日が沈み、薄い残照の中に青みが流れる頃、鐘の取手の部分にオレンジ色のライトが灯り、それがゆっくりとまわり始める。灯台はいつも夕闇のその正確なポイントを捉えた。見事な夕焼けの中でも、暗い霧雨の中でも、灯台の捉える瞬間は常に同じだった。

真っ白い砂と青と激しい波のコントラストが美しかった。

プールの表面は一面、雨粒が作り出す水模様のせいで、無数の小魚が餌を欲しがってうごめいているみたいに見える。

空が秋らしく青空に澄む日には、海はその青よりやや温い深青に映った。

小石を撒くような水の音

瀬の石と石との間に出来た小さい流れ