ゲンゲの天ぷらは、さくっとした衣の下から甘い身が溶けるように口の中に溢れ出る。これだけあっさりしていて、しかも旨みが充実している天ぷらダネは滅多にない。

身は淡白でふっくらしていて、味のきめが細やか

皮のゼラチン質がとろとろ口の中で泳ぐような感じでなんとも官能的

食卓にはこのごろ毎晩のように出る白い魚があった。栄養価はそれなりにあるらしいが、水っぽくって大味の切り身である。

淡泊なのに脂気があって不思議な味

ぬるぬるした変に愛嬌のある魚

塩焼きにして、うっかり食うと火傷するような熱い奴を、ガブッとやるのが香ばしくて最上

塩鮭をジッと見ていると、なんだか哀れで涙が滲んでくる。《…略…》暗く落ちくぼんで悲しみをたたえたような目。恨みごとをつぶやいているように軽く開かれた口。憤懣やるかたないといったふうに突き出された下くちびる。依怙地そうに張っているエラ。陰険そうに突っ張った鼻柱。そして全身に漂う孤独感。 　見ているうちに、なにかこう、暗い気持ちになっていくのを押しとどめることができない。