とにかく、春の勢いはすごい。これまではモノクロにくすんでいた画面に、一瞬で色がつくみたいだ。どんな特撮技術を使っても、この鮮やかな景色の変化は表現できないだろう。 変化は景色だけじゃなく、においにも音にも表れる。冬のあいだは硬く冷たく流れる川が、草木が芽吹きはじめるのとほぼ同時に、さらさらと優しい音に変わる。水は澄みわたって、甘い香りがする。金色に輝く川底の砂に、透明なメダカの群の影が映っているのを発見し、俺は思わず声を上げてしまった。 なんかこう、春はすべてにメリハリがつくって感じだ。繁ばあちゃんの大群に包囲されてるのが冬だとしたら、百人の直紀さんがバイクに乗って、山を駆けめぐってるのが春だ。張りがあって騒々しい。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:19% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
春
田舎(いなか)
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前後の文章を含んだ引用
......鋤きこんで肥料にするらしい。 畦道には小さなスミレの花がいっぱい咲いた。あちこちの家の庭先で、里山の緑の合間にも、コブシが白い炎のように無数の花をつけている。 とにかく、春の勢いはすごい。これまではモノクロにくすんでいた画面に、一瞬で色がつくみたいだ。どんな特撮技術を使っても、この鮮やかな景色の変化は表現できないだろう。 変化は景色だけじゃなく、においにも音にも表れる。冬のあいだは硬く冷たく流れる川が、草木が芽吹きはじめるのとほぼ同時に、さらさらと優しい音に変わる。水は澄みわたって、甘い香りがする。金色に輝く川底の砂に、透明なメダカの群の影が映っているのを発見し、俺は思わず声を上げてしまった。 なんかこう、春はすべてにメリハリがつくって感じだ。繁ばあちゃんの大群に包囲されてるのが冬だとしたら、百人の直紀さんがバイクに乗って、山を駆けめぐってるのが春だ。張りがあって騒々しい。 こういうのはさすがに、俺の生まれ育った横浜じゃお目にかかれない。神去なんて田舎だ田舎だと思ってたけど、田舎にもけっこういいとこがあるもんだな。小さな橋の欄干に......
単語の意味
景色(けしき)
砂(すな)
目高(めだか)
景色・・・風景。眺め。とくに、自然の眺め。
砂・・・岩石が細かくなったもの。岩が徹底的に砕かれたもので有機物が含まれていない。そのため、土(有機物が含まれる)と違って、植物は育ちにくい。砂場や砂漠に雑草が生えにくいのもこのため。
目高・・・1.メダカ科の淡水魚。3cmほどの小魚で、群がって泳ぐ。背中は薄黄色、腹は白色。目が大きく、丸呑みにすれば、目がよくなるとか突き出てくるなどの俗信をもつ。名前の由来は、高い位置に目があるように見えるため。一昔前、田んぼや小川、池などで普通に見られたが、現在は国産メダカは絶滅危惧種。
2.目が高いこと。物を見る目、鑑識力がすぐれていること。また、そういう人。
2.目が高いこと。物を見る目、鑑識力がすぐれていること。また、そういう人。
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春の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
春の空気は漠然と重く、そして皮膚をむずむずとさせた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
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田舎(いなか)の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
見渡す限り人家のない僻地
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
時どき烟 を吐く煙突があって、田野はその辺 りから展 けていた。レンブラントの素描めいた風景が散らばっている。
梶井基次郎 / 城のある町にて
ここ、糸守町は人口千五百人のしょぼい小さな町だけに、大抵の人たちは知り合い、あるいは知り合いの知り合いなのだ。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
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「春」カテゴリからランダム5
ふっと目を閉じたくなるほど、強く、甘く、大気が花の香りで満ちている春
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
丘の上から、裾野まで見渡せる大きな大きな富士山を眺める。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
馬の背のような切り立った道
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
様々な音が混じりあったやわらかなうなりが、雲のように街の上に浮ぶ
村上 春樹 / 螢・納屋を焼く・その他の短編 amazon
おーいと呼んでみたいような懐かしいふるさとの山
住井 すゑ / 夜あけ朝あけ amazon
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