日本語表現インフォ：ピンとくる言葉や描写が見つかる辞典

自分は、その時の、頸（くび）をちぢめて笑ったヒラメの顔の、いかにもずるそうな影を忘れる事が出来ません。軽蔑の影にも似て、それとも違い、世の中を海にたとえると、その海の千尋（ちひろ）の深さの箇所に、そんな奇妙な影がたゆとうていそうで、何か、おとなの生活の奥底をチラと覗（のぞ）かせたような笑いでした。

太宰治 / 人間失格　ページ位置：57%　作品を確認（青空文庫）

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あざ笑う・あきれて笑う

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前後の文章を含んだ引用

......い帝国大学校を出たって、……」「いいえ、サラリイマンになるんでは無いんです」「それじゃ、何です」「画家です」　思い切って、それを言いました。「へええ？」　自分は、その時の、頸（くび）をちぢめて笑ったヒラメの顔の、いかにもずるそうな影を忘れる事が出来ません。軽蔑の影にも似て、それとも違い、世の中を海にたとえると、その海の千尋（ちひろ）の深さの箇所に、そんな奇妙な影がたゆとうていそうで、何か、おとなの生活の奥底をチラと覗（のぞ）かせたような笑いでした。　そんな事では話にも何もならぬ、ちっとも気持がしっかりしていない、考えなさい、今夜一晩まじめに考えてみなさい、と言われ、自分は追われるように二階に上って、寝て......

単語の意味

首・頸・頚（くび）

比目魚・平目・鮃（ひらめ）

尋（ひろ）

首・頸・頚・・・１．頭と胴体をつなぐ細い部分。頸部（けいぶ）。また、「頭」そのものを指す場合もある。
２．１に似た役割を果たす部分や似た格好の部分。衣服の襟（首にあたる部分）。「びんの首」「セーターの首」など。
３．免職や解雇することをあらわす。首を切るという意味から。

比目魚・平目・鮃・・・ヒラメ科の海魚の総称。体は平べったい卵形で、カレイに似ている。ヒラメとカレイを判別する方法に「左ヒラメの右カレイ」という言葉があり、向かい合せに見たとき、2つ目が左側に寄ったものヒラメ。（カレイは右側）。体色は周りの色に合わせ変化する。歯はカレイより鋭い。目はヒラメほど飛び出していない。

尋・・・１．大人が両手を左右いっぱいにに広げた時の、両手先の間の距離。「ひろ（げる）」という意味。「尋」は「左」「右」「寸」を合成した字。
２．縄の長さや水深などをはかる単位。1尋は5尺（1.515ﾒｰﾄﾙ）または6尺（1.818ﾒｰﾄﾙ）。漁業や釣りでは1.5メ-トルとしている。