植え込みのところに蒲公英の花があった。小さな黄色い花弁は、疲れを恐れず、はしゃぐだけはしゃぎ、くたっとそのまま眠り込んだ子供のような、あどけない生命力を感じさせる。地味な緑色をした茎がそれを、よろよろしながら支えている。黄色の小花を包む、緑の皮、その皮の下部が垂れ下がっている。セイヨウタンポポだ。

外来種であるセイヨウタンポポが従来のカントウタンポポを駆逐した。

ひかり園を囲んでいる緑全部が荒々しくぶつかり合って、重たい音を響かせていた。ひかり園に吹き付ける風の音は、緑が多い分だけ余計に激しく聞こえた。風の幕がひかり園全体をすっぽり覆っていた。

あたりに漂う芳香には 揮発 性があり、あたかも生命の息吹のように、はかなく天に昇る。それゆえにあらゆる宗教的な儀式において、乳香と 没薬 は重要な役割を演じるのである。香りにはどこか霊的な働きがある。

濁った朝焼けの空を、樹々の梢がやたらにかきまわして騒ぐ

遠い林の黒ずんだ枯れ枝の交錯が、解読不能の石碑の文字のように白っぽい空に刻みこまれる

空地は平らで、くるぶしまでの柔かい草が浅瀬のように広がっていた。