初冬に入って間もないあたたかい日で、照るともなく照る底明るい光線のためかも知れない、この一劃 だけ都会の麻痺 が除かれていて、しかもその冴 え方は生々しくはなかった。
岡本かの子 / 河明り ページ位置:2% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
冬の日差し・光
古い建物の佇まい
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前後の文章を含んだ引用
......横たえているが、陸側は住居附きの蔵構えの[#「蔵構えの」は底本では「蔵構への」]問屋店が並び、河岸側は荷揚げ小屋の間にしんかんとした洋館が、まばらに挟っている。初冬に入って間もないあたたかい日で、照るともなく照る底明るい光線のためかも知れない、この一劃 だけ都会の麻痺 が除かれていて、しかもその冴 え方は生々しくはなかった。私はその横道へ入って行った。 河岸側の洋館はたいがい事務所の看板が懸けてあった。その中の一つの琺瑯質 の壁に蔦 の蔓 が張り付いている三階建の、多少住み古した跡はある......
単語の意味
光線(こうせん)
冴える・冱える(さえる)
初冬(しょとう・はつふゆ)
光線・・・光のすじ。光の線。差してくる光。
初冬・・・冬の初め。陰暦10月の異名。孟冬(もうとう)。
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冬の日差し・光の表現・描写・類語(冬のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(二月の)春をほのめかすような日
有島武郎 / 或る女
冬の、あたたかい午後である。 陽ざしが早春のそれのように、きらめいていた。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
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古い建物の佇まいの表現・描写・類語(家・建物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
戦災に焼け残った店がかたまっていて、町そのものも、むかしの東京の面影を色濃くとどめている。
池波 正太郎「むかしの味 (新潮文庫)」に収録 amazon
食堂を出て動坂 の講談社に行く。おんぼろぼろの板塀 のなかにひしめく人の群をみていると、妙にはいりそびれてしまう。講談社と云うところはのみの巣のようだと思う。文明も何もない。只、汚ないぼろぼろの長い板塀にかこまれている。
林芙美子 / 新版 放浪記
古びた寮の建物が、夜の色に包まれて暗く年取った大きな獣のように陰気くさい
佐藤 愛子 / 窓は茜色 amazon
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「冬」カテゴリからランダム5
みぞれまじりの、空気が歯にしみるような寒い夕暮れ
宮部みゆき / たった一人「とり残されて」に収録 amazon
初冬の冷く粒立った空気が、爽かな陽光を含んで冴え返っていた
五木寛之 / 夜の斧 amazon
「家・建物」カテゴリからランダム5
外納屋に、手を入れたくらいな、茅 ら屋
吉川英治 / 雲霧閻魔帳
家はくたびれていた。 鉄平石の門もモルタルの壁も、白く 粉 を吹いていた。能筆が自慢の重役が贈ってくれた大きな表札は、雨風に 晒されささくれて、履き古しの下駄に見えた。
向田邦子 / はめ殺し窓「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
荘園みたいに大きな家
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
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