忘れられないのは、おれがその時始めて、放免（ほうめん）の一人を切り殺した事であった。あの男の鋭い叫び声と、それから、あの血のにおいとは、いまだにおれの記憶を離れない。

この数週間に起きた様々な出来事がエンドレステープのように頭を巡り、酔いに拍車をかける

イヤな目に遭って、そのことがずっと自分の中に針が刺さったように何年間も残っている。

（PTSD）「設定値が過敏なセンサー」のように、何でもないことのために不安になっている

１０年たった今でも大きなしこりとなって頭の片隅に引っかかっている

忘れたいのにむやみに何度も脳内で再生される。

君は妙に力強い印象を私に残して、私から姿を消してしまったのだ。

一度で、その歌が海綿にでも吸われるように、皆に覚えられてしまった。

今でも目を閉じると浮かんでくる、忘れられない光景がある

何かあまりにも強烈な体験をすると、目の前の景色ががらりと変わってしまう

城戸は、走り書きのメモを元に、二人から聴いた原誠の話を、記憶している限り、文章にしていった。

記憶は司祭の目ぶたの裏に焼きつくように残っていた。

やがて記事が掲載される頻度は下降し、いつしか、この事件が紙面に載ることもなくなる。そして、誰も気に留めぬうちに、ひっそりと時効を迎えるのだ。

細かな細部まで拡大鏡を通じたように明瞭に浮かび上がる

（ここ数年の人生を振り返って紙に書き出す）文字にしてながめてみると不思議だった。 　その紙をテーブルの上に置いておいたら、それはあたりまえだけれどテーブルの上の四角い白い単なる切れ端で、丸めて捨てても、飛んでいってしまっても何の意味もない。 　なのにその紙が愛しく思えたり、そこにまるでマイクロフィルムのようにこの数年のめくるめく情報が満ちあふれては流れでて空間を染めていくように思える。 　心は白紙を映像に変える。 　私はその映像のなかをさまよっていつのまにか、ここにきた。