受話器をとったとき、そこから聞こえてくるのは激しい風音だけだった。 「ゴオオオオオオウ」という風音だけが、一八八一年のインディアンの一斉蜂起みたいに受話器の中に荒れ狂っていた。彼らは開拓小屋を焼き、通信線を切り、キャンディス・バーゲンを犯していた。 「もしもし」と僕は言ってみたが、僕の声は圧倒的な歴史の怒濤の中に空しく吸いこまれていった。

思わず外套の襟を立てて肩をすくめるような気難かしい風が荒々しく市街を吹きまくった。

吹き始めた暴風は一秒ごとに募るばかり

風がひゅうひゅうと強く吹く

ゆすぶられるような激しい風が吹く。

露を含んだ爽やかな風がさっと吹き入る

ゆっくり力を入れ大きい声で明晰に返事したのに、風に吹き散らされ素子へ届かなかった。

一陣の風がさっと吹いてくる

脱いだガウンはドアの外の空間に捨てた。それはきずなを解かれた魂のように、風に乗ってさまよい、遠くに消えていった。

風が、ほつれ毛を弄ぶように襟元をくすぐる