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目のまわりに薄黒い暈 のできたその顔は鈍い鉛色をして、瞳孔 は光に対して調節の力を失っていた。軽く開いたままの口びるからもれる歯並みまでが、光なく、ただ白く見やられて、死を連想させるような醜い美しさが耳の付け根までみなぎっていた。
有島武郎 / 或る女(前編) ページ位置:65% 作品を確認(青空文庫)
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疲れた顔
絶望した表情
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前後の文章を含んだ引用
......いたような不思議な、混乱した感情の狂いに泥酔 して、事務長の部屋 から足もとも定まらずに自分の船室に戻 って来たが、精も根も尽き果ててそのままソファの上にぶっ倒れた。目のまわりに薄黒い暈 のできたその顔は鈍い鉛色をして、瞳孔 は光に対して調節の力を失っていた。軽く開いたままの口びるからもれる歯並みまでが、光なく、ただ白く見やられて、死を連想させるような醜い美しさが耳の付け根までみなぎっていた。雪解時 の泉のように、あらん限りの感情が目まぐるしくわき上がっていたその胸には、底のほうに暗い悲哀がこちんとよどんでいるばかりだった。 葉子はこんな不思議な心の状......
単語の意味
歯並(はなみ)
暈(かさ)
瞳孔(どうこう)
歯並・・・歯の並んだ具合。歯並び。
暈・・・1.光の輪。ときどき太陽を囲うようにできるドーナツ形の光。また、その現象。ハロ。
2.疲れたときに目の周りに出てくる黒いあざのようなもの。「暈」で「くま」とも読む。
2.疲れたときに目の周りに出てくる黒いあざのようなもの。「暈」で「くま」とも読む。
瞳孔・・・瞳にある、光を取り入れる孔(あな)。光線が目玉の中にはいる、入り口。眼球の虹彩に囲まれている丸い穴。「孔」は、訓読みで「あな」と読める。
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女子学生は、非常に老けた、疲れきった表情をしていて、それは病気の鳥のような感じだった。
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
影のように暗鬱な顔の色
横光利一 / 日輪
泥と 髭 とでうすぎたなく汚れ、そして不安と疲労とですっかり 歪んでいる追いつめられた男の顔
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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云い知れぬ失望の色が、スウット若林博士の表情を横切った。
夢野久作 / ドグラ・マグラ
取り返しのつかない絶望に陥 った、蒼ざめた顔
岡本かの子 / 金魚撩乱
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丸顔におでこ、小さい鼻、おちょぼ口、―――一つ一つを見れば取り柄のない方だが、眼がいかにも悧巧(りこう)そうで美しく、色白の頬には赤みが差し、それに生(うぶ)毛をはやしたさまがいかにも可愛らしい。
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トランプの王様みたいなクラシックな美貌の横顔
宮地 嘉六 / 煤煙の臭い「宮地嘉六著作集〈第1巻〉 (1984年)」に収録 amazon
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空疎な微笑を片頬 に装飾する
岡本かの子 / 母子叙情
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