天候は急速に崩れつつあった。青が僅かにまじった淡い灰色はその不安定な微妙さに倦んだかのようにくすんだ灰色へと変り、そこに煤のような不均一な黒が流れ込んでいった。まわりの山々もそれにつれて陰鬱な影に黒く染められていった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:75% 作品を確認(amazon)
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雨雲・暗雲
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前後の文章を含んだ引用
......プは険しい岩山へと姿を変え、やがて垂直な岩の壁に変った。そして我々はのっぺりとした巨大な壁に刻まれた狭いはりだしに辛うじてしがみついているような格好になった。 天候は急速に崩れつつあった。青が僅かにまじった淡い灰色はその不安定な微妙さに倦んだかのようにくすんだ灰色へと変り、そこに煤のような不均一な黒が流れ込んでいった。まわりの山々もそれにつれて陰鬱な影に黒く染められていった。 風がすりばち形になった部分で渦を巻き、舌をまるめて息を吐くような嫌な音を立てていた。僕は手の甲で額の汗を拭った。セーターの中でも冷たい汗が流れていた。 管理人......
単語の意味
淡い(あわい)
陰鬱(いんうつ)
倦む(うむ・あぐむ)
煤(すす)
淡い・・・味や色や香りなどが薄い。光や形がぼんやりしている。
陰鬱・・・陰気(=どんよりして)で鬱陶(うっとう)しい(=晴れ晴れしない)さま。気持ちがすっきりしてないさま。気分が重苦しいさま。
倦む・・・同じ状態が続いてイヤになる。退屈する。あきる。
煤・・・1.煙の中に含まれる黒色の粉。
2.黒く天井や壁のすみにくっ付いた、ちりやほこりの塊。
2.黒く天井や壁のすみにくっ付いた、ちりやほこりの塊。
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雨雲・暗雲の表現・描写・類語(空・中空のカテゴリ)の一覧 ランダム5
道の正面に近く見える東山は暗く 霞み、その上を薄墨色の雲が騒がしく飛んでいた。変に張りのない陰気臭い日だった。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
空は曇っているので海は鈍い褐色を帯びている。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
妙に透明な空に、墨をぶちまけたような雲がちぎれて散っている
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
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「空・中空」カテゴリからランダム5
アタリノ山々ガ浮キアガッタカト思ワレルクライ空ガ美シイ
有島武郎 / 生まれいずる悩み
月がときどき雲間から顔を見せるようになった。世界中の海がその潮の流れを調整していた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
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