(イスラム教の礼拝堂)がらんとして何もない石畳と絨氈 の奥まった薄闇 へ、高い窓から射 し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。それを眺めていると、心が虚 になって、肉体が幻の彩りのままに染め上げられて仕舞いそうな危険をほとほと感ずる。
岡本かの子 / 河明り ページ位置:62% 作品を確認(青空文庫)
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前後の文章を含んだ引用
......市が見える。ジョホール海峡の陸橋を渡って、見えていた市の中を通って、なおしばらく水辺に沿って行った処で若い紳士は車を停 め、土地の名所である回教の礼拝堂を見せた。がらんとして何もない石畳と絨氈 の奥まった薄闇 へ、高い窓から射 し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。それを眺めていると、心が虚 になって、肉体が幻の彩りのままに染め上げられて仕舞いそうな危険をほとほと感ずる。私たちは新嘉坡の市中で、芭蕉の葉で入口を飾り、その上へ極端な性的の表象を翳 しているヒンズー教の寺院を見た。それは精力的に手の込んだ建築であった。 虚空を頭とし、......
単語の意味
石畳(いしだたみ)
表象(ひょうしょう)
肉体(にくたい)
石畳・・・平たい石を敷き詰めて舗装された道や場所。
表象・・・1.言葉で表現しにくいものを、それを連想させる具体的なものに置き換えて表すこと。シンボル。象徴。
2.ある考えの全体像を頭に思い浮かべること。また、思い浮かんだイメージそのもの。
2.ある考えの全体像を頭に思い浮かべること。また、思い浮かんだイメージそのもの。
肉体・・・肉から構成されている体。生きている人間の体。生身の体。
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黒い田を越して法隆寺の伽藍が灰屑のように淡く望まれた。
岡本 かの子 / 落城後の女「岡本かの子全集 (第3巻)」に収録 amazon
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いかにも蕎麦屋らしい風格を残している
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この界隈では一流とはいえないが、それだけ肩が張らなくて落ちつく
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