大部屋の空気の変化に気づいていた。熱気が薄れた。奇妙なほど落ちつき払っている。喧騒は相変わらずだが、殺気立ったところがない。昨日まで部屋中を包んでいた、ヒリヒリとするような乾いた空気が、微かだが湿りけを含んでいるようにも感じられる。《…略…》犠牲者の遺書に流した局員の涙が、熱に浮かされていた大部屋の空気に湿りけと落ちつきをもたらした。

娘の気持ちが暗くなると、家の中には雨洩りがするときに似た陰湿なものが漂い始める

エンジンの音が消え、エアコンの風音が消えると、車内には居心地の悪い静寂が訪れた。

お通夜のような重苦しい空気が部屋によどむ

夕方前には満喜子、登の両夫婦が帰っていき、大きな区切りがついた家の中は気だるい静けさに包まれた。

闇の中に氷のような殺気が走る

その場の空気が、一瞬刃物のように光る

四人でごはんを食べていると、じわっとしたなんとも言えないくつろぎを感じた。家族的な雰囲気と、自分がここにいるのがしみじみと求められていて居心地がいい感じだった。

何となく弟に押されて、全員のムードが彼よりに傾いていった。

家庭が枯れた畑のように感じられた。