電車の座席を我が物顔で占領する

チーズバーガーみたいにねっとりした顔

顔が少しばかり薬ビンに似ている

顔が岩のように腫れ上がる

尖った口と細い目が狐に似ている

削いだように肉の落ちた頬に頑固で神経質そうな性格がうかがわれる

咽喉もとに七面鳥のようなこまかい皺のよった勝基老人

丸顔のぽっちゃりした愛くるしい顔

額や頬の筋肉が蟹の甲羅のような顔

葉子だけは春が来てもやせた。来るにつけてやせた。ゴム毬（まり）の弧線のような肩は骨ばった輪郭を、薄着になった着物の下からのぞかせて、潤沢な髪の毛の重みに堪（た）えないように首筋も細々となった。やせて悒鬱（ゆううつ）になった事から生じた別種の美――そう思って葉子がたよりにしていた美もそれはだんだん冴（さ）え増さって行く種類の美ではない事を気づかねばならなくなった。その美はその行く手には夏がなかった。寒い冬のみが待ち構えていた。