重く垂れ込めた雲の裂け目から夕焼けが滲んで見える

空の肌質（きじ）はいつの間にか夕日の余燼（ほとぼり）を冷（さ）まして磨（みが）いた銅鉄色に冴（さ）えかかっていた。表面に削（けず）り出しのような軽く捲（ま）く紅いろの薄雲が一面に散っていて、空の肌質がすっかり刀色に冴えかえる時分を合図のようにして、それ等の雲はかえって雲母（うんも）色に冴えかえって来た。

空は夕焼け、真紅の雲が放射線をなして天頂まで、延びて来た。

雲のふちが金色に光る

黄ばんだ赤茶けた色が泣きたいほど美しい雲

駅から家までの道のりを、月がていねいに照らしてくれている。

空が恐ろしく青く、吸い込まれるように遠く、まるでよくできたブルーのゼリーのように、触れることができそうなきちんとしたグラデーションで天上からずっと、さえぎるものの何もない地平線まで続いていた。乾いた空気、乾いた地面。ぽつりぽつりとある建物がくっきりとその広大な眺めに模型のように見えた。

死人の眼のように濁った灰色の雲

ドームのように広い空、海。

なまけものに夢を見させる、あの金色の小さなやつさ。