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私は瀬を揺がす河鹿の声のなかに没して
梶井基次郎 / 交尾 ページ位置:100% 作品を確認(青空文庫)
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虫の音 蛙(かえる)
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前後の文章を含んだ引用
......泳いで行くのである。こんな一心にも可憐な求愛があるものだろうか。それには私はすっかりあてられてしまったのである。  もちろん彼は幸福に雌の足下へいたり着いた。それから彼らは交尾した。さわやかな清流のなかで。――しかし少なくとも彼らの痴情の美しさは水を渡るときの可憐さにかなかった。世にも美しいものを見た気持で、しばらく私は瀬を揺がす河鹿の声のなかに没していた。
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