一縷の望みを捨てることができない

一六勝負

出たとこ勝負の賭けに出る

旱魃（かんばつ）時の蝸牛（かたつむり）のようにじっと己を閉じ込めて《…略…》どうなるかわからない明日の運命を待つよりほかはありませんでした。

一世一代の大勝負を仕掛ける

旱魃（かんばつ）時の蝸牛（かたつむり）のようにじっと己を閉じ込めて《…略…》どうなるかわからない明日の運命を待つよりほかはありませんでした。

ずうっと、安全な室内にいると、人間は家に同化して家具のようになってしまう。 　町でよく見かける、外にいるのに服装も顔も室内のままな人。のっぺりして反応が鈍く、人の目を見ない、ゆるみきった人。野性を忘れてしまった目をしている。

それは娘の歎（なげ）きの部屋ではあるまいか、しんも根（こん）も尽き果てて人前ばかりでなく自分自身に対しての、張気も装いも投げ捨てて、投げ捨てるものもなくなった底から息を吸い上げて来ようとする、時折の娘の命の休息所なのではあるまいか。

アパートに閉じ込もり、畳から湧いてくる湿気で、自分自身に黴が生えることを望む気分で、生きていた。

「殻に閉じこもるのは良くない」と以前に成瀬が一度言ったことがあるらしいが、すると田中は、「違うんだよ」と怒ったという。「僕が世界を閉じ込めているわけ。僕の部屋の壁が世界を囲んでいるんだよ。閉じ込められているのは、僕以外の全員で、外にいるのは僕だけってわけ」

花咲き匂うような素晴らしい人生

彼は偶然なこと故に、 却ってそれが何かの故意のよう考えられるのだ。

目に見えぬ糸で操られているような人生

元社長であり、現在は名誉会長という名の隠居生活を送っている。

十月半ばの日曜日は穏やかな天候に恵まれて、どこもかしこも長閑さに溢れていた